第64回よさこい祭り

今年は、よさこい祭りに向けて例年にない事態が起こっていました。ホテルが全く予約できないのです。私は、取材のため競演場・演舞場近くのホテルに拠点を設けているのですが、今年は空き部屋がありません。おそらく、11日が祝日（山の日）で翌日から土日の週末を迎えるため、たくさんの人が高知に来られたに違いありません。私もかなりの綱渡りになりました。最終的にはなんとか部屋を確保して、4日間の取材に臨みました。
（写真右／中央公園で演舞する『とらっくよさこい（ちふれ）』）

ところで初日の前夜祭は毎年フォーマットが変わっているのですが、審査がなくなってから“ゆるい”感じになりました。よさこい祭りの初期の頃はこうだったんだろうなぁと思わせる印象です。書物でしか読んだことがありませんが、昔は「踊りゆうかぇ」と顔見知りの踊り子に声をかけ、飲み物（土佐ではデフォルトが酒）を提供したり、あるいは逆に飛び入りで参加したりということがあったようです。花火をホリゾントに、「今年の、このチームは、こんな仕上げなんだ」と確認していました。ただ面白いのは、前夜祭で見る踊りとその後の3日間（チームによっては2日間）が違って見える点です。たった数日でも、同じチームなのに変化していくとは、その自在ぶりに驚かされます。（これはおそらく、見ている観衆の反応がチームに影響を与えているのだと思います。）

よさこい祭り本番の2日間は、今回も昼は追手筋、夜は演舞場という陣取りをしました。追手筋に次々と繰り出してくるチームを見ながら今年のキーワードを考えた時、「変化」だと思い当たりました。それは、高知の内部と外部からやってきました。今年の受賞結果を見て、誰もが驚いたのが『ほにや』の銀賞受賞です。毎年よさこい大賞の受賞候補であった同チームが、まさかの5位でした。これはおそらく“いつものほにや”を安心して見られたか、代わり映えしないと捉えたかの違いだと思います。逆に『十人十彩』は楽曲の印象を大きく変え、振り付けもそれに合わせて変えました。一度どん底を経験したこのチームが、よさこい大賞を受賞したというのは、感慨深いものがあります。
（写真左／追手筋本部競演場で演舞する『十人十彩』）

また、よさこい祭りに“逆輸入”という形で変化をもたらしているものもあります。今年、東京の原宿表参道元氣祭・スーパーよさこいなどで活躍している『しん』が初出場しました。このチームを作っている天空しなと屋は、『ほにや』をはじめとして高知のチームにも多くの関わりがあります。そのセルフプロデュースしたチームが高知にやってくるというのも面白い現象です。おそらく“逆輸入”の 嚆矢こうし となったのは上總組（初出場当時は『武州よさこい上總組』）だと思いますが、こうしてよさこい祭りが進化を続ける原動力の一つになっています。

いつもの通り、よさこい祭りの4日間は最終日の後夜祭・よさこい全国大会を最後にあっという間に過ぎてしまいましたが、充実した4日間でした。高知のよさこい祭りでは、実は取材する側は色々な制約に縛られています。最初に書いた取材拠点の確保から始まり、取材申請、場所取り、天候、機材それに体調もあります。それでも今まで続けてこられたのは、毎年新しい趣向で私たちを魅了するチームの皆さんの努力と忍耐があったからに他なりません。私はこれからも、進化し続ける高知のよさこい祭りを見続けようと思っています。

第64回よさこい祭り日程

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